どかす女

妊娠中に通勤電車に座れないというのはなかなか辛い。幸いにして、昨年引っ越して都心に遠くなったせいか、私が乗る駅ではまだ人が乗れる余裕があり、時折優先席も空いている。

今朝も「あ、良かった~」と思いつつ空いていた優先席に座り、つわりによる気分の悪さをごまかしながら本を読んでいた。隣の席は2回ほど人がかわっただろうか。通勤の道のりも半分ほどを過ぎた頃、ふと読んでいた本から目を上げると、斜め前に私よりお腹の大きい妊婦さんが立っていた。バッグにはちゃんと見えるように、マタニティマークをつけている。

おそらく7ヶ月くらいのお腹で、もうつわりなんてないだろうから、立っているのは初期の頃より辛くはないはずだ。でも大きくなっているお腹は重たくて、普通の大人が電車で立っているのとはワケが違う。まだつわりが続いている私が席を譲ってあげることもないけれど、立っているのはさすがに気の毒だ。

そう思って隣の席を見ると、40歳くらいのサラリーマンがスポーツ雑誌を読んでいる。いたって普通で、健康そうだ。そこで私は言った。

「すみません、良かったら譲ってあげていただけませんか?」

男性は「え?」と怪訝そうな顔をしながらも、私が意識して見た妊婦さんに気づき、「ああ」と言って立ってくれた。

“座りたい座りたい、あたしのお腹が見えないの!?”オーラを出していた妊婦さんは、お礼を言いながら座り、私にも軽く頭を下げてくれた。

自分でもちょっと驚いたことだけど、他人のおせっかいを焼いて隣の人に席を譲らせたことが、私はちっとも恥ずかしくなかったし、やましくもなかった。それよりむしろ、「妊婦が優先席に座れるという権利は、行使しなければ何の意味もないのよ」などと思っていた。

……強くなったなあ。ホントに。

年齢を重ねたということでこの強さ(図々しさ)が出てきたというなら、快くオバハンとでも呼ばれようじゃないか。ストレスレスな妊娠生活を送るために。

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好きな本は「赤毛のアン」「精霊の守人」「西の魔女が死んだ」などなど。新しいkindred spiritsと出会えるのを楽しみにしています。

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