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つぶれたアンパンのあじ

少し前、ぼんの国語の教科書がテーブルに置きっぱなしだったので、手に取ってみた。どうやら「身近なことをニュースにしよう」というようなことを勉強しているらしかった。

国語の教科書

「えー、ちょっとちょっと、面白そうなことやってるじゃん。お母さん、こういうの大得意!」……と言いたいのをこらえて「へ~、面白そうなことやってるね」と水を向けてみた。案の定、反応は薄い。「君はどんなニュースにしたの?」と聞いても「この前のアンパンのこと」としか答えない。

「ニュースってのはさ、人が『へー、そうなんだ』っていう要素がなきゃダメなのよ。あと、新鮮さも大事」などとちらっと言ってみたけれど、全く食いつかない。せっかく、せっかく、アタシが偉そうにできる分野なのに~~

「この前のアンパンのこと」というのは、先日みんなでアスレチックに行った時、お昼に買い過ぎたパンの残りをリュックに入れておいて、帰りの車の中で食べようと楽しみに取り出したところ、アンパンがこれまでに見たこともないほどぺちゃんこになっていたという出来事のこと。ぼんはそれで大笑いしていたのだった。

そんなことをニュースにするのかよ……と思ったけれど、まあ彼がそれを面白がったんだからテーマ設定には口をはさむまい。それを、どんな風に書いたのか気になった。机の上に放り出してあった国語のプリントを見たところ、ネタ出し程度のメモしか書いてない。つまらないなー、と思いながら、宿題をチェックするために日記帳を開いてみたら、あった!

アスレチックに行った日の日記には、どんなに楽しく遊んだかなどは一言も書いておらず、可もなく不可もない程度の文章でアンパンを見つけた時の様子が書かれていた。もっと盛り上げる書き方すれば良いのにな~と思いつつ、最後の文を読んだ。「たべたら、つぶれたアンパンのあじがしました」。

ほほお、と思った。それがヤツの感想なんだな。「つぶれたアンパンのあじ」。

――後日、先生から日記帳が返されてきた。見ると、赤ペンで添削してある。しかも最後の文章に。

原文 「たべたら、つぶれたアンパンのあじがしました」
添削 「つぶれていたけれど、たべたらアンパンのあじがしました」

思わず目を見開いてしまった。二度読みもしてしまった。そして思った。「先生~~~!!」

わざわざ書くまでもないが、ぼんが日記で書きたかったのは「つぶれたアンパンのあじがした」ということだ。それは決して、普通の「アンパンのあじ」ではない。そのアンパンは、つぶれていなければならない。ぼんは、そこに面白さを感じたんだから。

そうか、先生には伝わらなかったか……と思う一方で、だったらどう書けば良かったのかと考えた。国語という教科の中で教える立場からしてみれば、理路整然としていて万人がわかる整った文章を教えたいのかもしれない。先生がそう思われたんだとしたら、その立場は理解できる。

でも、母親としては、我が子のその感性を大切にしたいのですよ。「つぶれていてもアンパンのあじがした」ことではなく、「つぶれたアンパンのあじ」を楽しんだ感覚を。

じゃあ「つぶれたアンパンのあじ」をもう少し説明すれば良かったか。「じっくり噛まなければあんこだとわからないほどつぶれていたけれど、飲み込む直前には舌が甘さを感知して、それは紛れもなくつぶれたアンパンの味でした」とでも書けば良かったか。

いや、違う。ぼんは「つぶれたアンパンのあじ」ですべてを表現したかったはず。アイツと8年近くも付き合っていれば、それくらいはわかる。ヤツにはそういうユーモアがある。

「どう思う?」と子どもたちが寝付いた後にダンナに話をしてみると、「そりゃー、新卒の若いお姉ちゃんにこういう感性を理解して子どもの文章を読み取れというのは無理だろう」と言う。

まあ、そうかもしれない。子どものこういう発想の面白さを楽しむほどの余裕は、新米の先生にはまだないだろう。先生に非はないけれど、添削されたぼんが、「正しい」文章に慣れてありきたりの発想をするようになったら、つまらないなあ。

でも「お母さんは、君の文章ですごく良いと思うよ」なんて言ったら先生を否定するようだし、何より日記に口出しすることをウザがられる()!ああアンパン、されどアンパン。母の悩みは軽けれど尽きませんなあ。

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好きな本は「赤毛のアン」「精霊の守人」「西の魔女が死んだ」などなど。新しいkindred spiritsと出会えるのを楽しみにしています。

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